地方創生

地方創生を成功させるために必要な3つの視点【各地方の事例も紹介】

地方

はじめに

地方創生の難しさ

少子化と人口減少、そして都市への集中という現実にあって、地方創生という目標を果たすのは生易しいことではありません。

地方経済を活発にし、人の流れを地方へと向け、地域社会の中ですべての年代が不安なく暮らせるのが、理想の在り方としては当然です。

しかし実際には地方創生の施策を打ちながら、成果が出せずに苦しむ自治体が数多く見られます。
さまざまな手間と時間、そしてコストをかけながら、地方創生がうまくいかない理由はどこにあるのでしょうか。

ここでは地方創生を成功させるために意識したい3つの視点と、成功事例から学ぶポイントを解説していきます。

地方創生の成功が難しいと言われる理由

暗雲

2015年に「まち・ひと・しごと創生基本方針」が閣議決定されて以降、「地方創生」が各自治体の合言葉のように叫ばれてきました。

さまざまな交付金や事業費がつぎ込まれる中で、成功が見られる一方、効果が認められない例も数多くあります。
地方創生の成功を妨げる要因とは、どのようなものなのでしょうか。

①地方創生の成功事例の流用

「地方創生」という大命題を掲げたとき、自治体側が参考にするのは他の地域の成功例です。
成功例をたどること自体は、計画策定の足がかりとして妥当な手法と言えるでしょう。

問題は他地域の例を、そのまま自分たちの地域に当てはめようとすることです。
公的な事業と企業が行うものとの大きな違いは、横並び意識です。

企業活動ではいかに差別化を図るかが重視されますが、国や地方が目指すのは均一的な成果のように思われます。

しかし地方にはそれぞれ独自に育んできた風土や文化があります。
地域の特性や強みが十分に読み切れていないまま、他の地域でうまくいった方法を何の工夫もなく取り入れても成功には結び付きません。

ゆるキャラやインバウンド、Iターンといった施策は、どこの都道府県でも見られます。
特性を活かせずに同じパターンを真似ても、大勢の中に埋もれてしまうだけです。

地方創生は、持続性のあるものでなければなりません。
そのためには、自分たちの地域がもつ伝統や魅力を熟知し、反映させていくことが大切です。

どのような施策を打つにせよ、単に成功事例をそのまま流用するのでは望ましい結果が期待できません。

②人口増イコール成功という呪縛

地域に人が呼び込めるのは良いことですが、それがイコール地方創生の成功というのはあまりに単純です。
一時的に活性化できたとしても新鮮味が失われてしまえば、次第にさびれていくのは目に見えています。

地方にある多くのテーマパークが廃業に追い込まれるのは、新鮮さから永続的な魅力へと変えることができずに苦しむからです。

一時的な呼び物効果に頼り、失敗した例の代表的なものとしては1980年代の「ふるさと創生事業」での施策が良い例です。
1億円の交付金で各自治体はこぞって「金の○○」を設置し、展示するための場所も造りました。

今、どれだけの自治体が「金の○○」の恩恵を受けているのでしょうか。
また「金の○○」を売却した後、そのお金を地方創生の事業に活用できたところはどの程度なのでしょう。

イベントを起爆剤とするのはひとつの手段ですが、一過性のものとしないために長期にわたる総合的な計画が必要です。

例えば最近ではご当地マラソンの開催が盛んに行われていますが、そこから地元の活性化にどうつなげていくのかを考えていくのが、地方創生のメインの作業となります。

「とにかく人を集める」ということが目的になってしまうと、本当の地方創生とは呼べなくなります。

人を集められたとしてその後に、どう動いていくのか、何を準備しておくべきなのかをも含めて検討していくことが求められます。

地方創生の最終的目標として、「人口増」は確かに重要です。
しかしそれは、「人を寄せる」ことではありません

魅力を発信しながら、「ここで暮らしてみたい」と思わせられること。
それが地方創生の成功への第一歩なのではないでしょうか。

③地方創生への効果検証の不備

生産性や成果を追い求める企業の考え方とは違い、予算を立てて消化をするという役所の在り方は、時に効果の検証があいまいなまま事を終了してしまいがちです。
その後、担当者が異動になれば、責任の所在さえも不明となっていきます。

地方創生を目指して会館などの「ハコモノ」を造る場合には、どの程度の集客が見込めるかという見通しが立てられているはずです。

しかし思い通りの効果が得られていないというのであれば、企業マーケティングのようなあらゆる角度からの検討がなされていなかった可能性があります。

地方創生を成功させるためには、ランドマークを造るだけでは不十分です。
稼働率や集客数など、目に見える形での検証をするための仕組みを先に考え、うまくいかないときにはどのような対策が可能かというところまで落とし込んでおく必要があります。

地方創生への経過途中で正しい効果の検証が実施できれば、軌道修正も容易です。
効果検証の不備が、地方創生の施策がうまくいかない時でも立て直しできないまま、うやむやのうちに終了させてしまいかねません。

④自治体にマッチするエキスパートの不在

地方創生事業がうまくいかない要因のひとつに、自分の地域に合ったコンサルタントを選択できていないということが挙げられます。

地方創生に精通し、自治体にマッチするような考えのエキスパートがいれば、現実味のある提案や俯瞰的な視点からのアドバイスをもらえるでしょう。

地域を担当する自治体職員ならば、その土地の詳細な部分にまで考慮することは可能ですが、自分たちだけで地方創生の事業アイデアを出していくのはなかなか難しいのではないでしょうか。

無理に進めようとすると他の地域の模倣に陥ったり、客観性のない自己満足の施策となってしまったりする恐れが出てきます。

もちろん外部のコンサルティング企業に丸投げするなどは問題外ですが、すべてを自分たちの手を行おうとするのには限界があります。

コンサルタントの見極めを入念に行い、二人三脚で進められるパートナーを選ぶことで、成功への道が近づきます。

⑤地方創生の失敗の情報が共有されない

「失敗から学ぶ」と良く言われますが、地方創生についても同じです。
地方創生の成功事例ばかりが取り上げられ、失敗事例から学ぶ機会がないとどうしても認識が甘くなります。

同じことをすれば結構うまくいくのではないかというように、安易に受け止めてしまうと最初から方向を見誤ります。

地域性が似通った例を見るときには、成功事例と共に失敗の例も併せて見ておくことが大切です。

なぜ片方が成功しているのか、どのような点で成功と言えるのかをチェックすると同時に、失敗に陥った原因を分析します。

成功の要因はひとつとは限りませんが、失敗の事例では「これがまずかったのでは?」といったマイナス点が見いだせるケースもあります。

失敗の情報が共有されないでいると、現実的な視点が抜け落ちていきます。

地方創生への道のりが決して簡単なことでないのを十分に意識しながら取り組むためにも、失敗例を読み解いておく必要があります。

地方創生の成功事例から見るべきポイント

地方創生の成功事例から見るべきポイント

失敗例から学ぶことが多いのは確かですが、一方で成功事例からポイントを見出すこともできます。
見るべきは「〇〇をした」というところではなく、その根本にある考え方です。

①IT活用の独自の工夫

ITを活用した地方創生は、今やごく当たり前のように聞こえます。
高速インターネットはもちろん、AI、ロボット、IoTなど、自治体の書類に記載されていない言葉がないほどです。

しかし、それがうまく運用されていると胸を張れる地域は、まだ少数派と言って良いのではないでしょうか。

ITを地方創生に活用して成功している地域の大きな特徴は、「テクノロジーを導入すること」が目的化していないことです。

地域の何が問題なのかをしっかりと明確にし、それを解決する手段としてITを活用しています。
技術が先ではなく、先にアイデアありきという点がポイントです。

またIT導入の効果を良く知っている人がいることで、具体的な成果を先読みできたことも勝因と言えそうです。

事例1:徳島県神山町「サテライトオフィスプロジェクト」

徳島県では県全域の98.8%に、光ファイバー網が敷設されています。
きっかけとなったのは、テレビ放送の地上デジタル化による視聴困難という事態でした。

ケーブルテレビ導入のための大容量高速回線が、中央からサテライトオフィスを呼び込み、一大IT集積地へと変えたのです。

都会と違って利用者が限られるため回線速度が維持され、業務環境は良好です。
2010年からの3年間でICTベンチャーなど、11社が同町にサテライトオフィスを開設しています。

過疎化に悩んでいた地方の町に、パソコンを手にした若者たちが流入。51世帯、81名が新たな町民となりました。

良好な動きを受けて徳島県では、「とくしまサテライトオフィスプロジェクト」を2012年3月から全県で展開しています。

視察ツアーやSNSによる情報発信から、移住者のためのカーシェアリングの運用、企業誘致のためのコンシェルジュの設置など、多元的な施策をくり広げています。

「サテライトオフィスプロジェクト」について詳しく見る

事例2:沖縄県久米島「農作物の地産地消システム」

沖縄県久米島では、タブレットなどから簡単に商品の売買ができるオンラインショップシステムを通じて地元の農家とホテル・レストランを結びつけ、地産地消を実現しています。

農業をする人の高齢化などで、久米島の農業売上高は減少の一途をたどっていました。

その課題解決のためにオンラインショップによるマッチングを図ることで、従来は出荷されずに廃棄されていた野菜をリゾートホテルや飲食店のメニューに活用。

新鮮な野菜は観光客からも好評です。

各農家の収入向上に貢献し、生産へのモチベーションも高められました。
さらに地産地消システムのWi-Fiインフラ設備が、観光アプリにも活用されたことで観光客数の増加にもつながっています。

「沖縄県久米島農作物の地産地消システム」について詳しく見る

②地域特性の再評価

誇れる伝統技術をもつ地域は多いものの、海外の安価な商品に押されて消滅していくという話を良く耳にします。

また「何もない田舎」であるのを理由に、人が流出していくのをただ眺めているしかないという地域も多いようです。

ここでは地域の特性を再評価し、伝統技術を独自ブランドとして確立した例と、「何もない」のを逆手にとって成功している地方創生の例をご紹介しましょう。

事例1:鯖江市「THE291(ザ・フクイ)」

福井はめがねの生産地として100年の歴史を持つ土地です。
中でも鯖江市は、国内のめがねフレームの96%のシェアを有します。

しかし1990年代、安価な海外製が輸入されるようになると、急激に生産数が落ち込みました。
鯖江市が対抗策として打ち出したのが、20社を超える地元メーカーの統一ブランドの設立です。

新ブランド「THE291(ザ・フクイ)」は、高い技術力を武器に、国内外の市場を開拓します。
厳しい審査を経て認定されためがねのみが、「THE291」ブランドとして取引され、現在では世界有数のめがねブランドとしてその地位を確立しています。

「THE291(ザ・フクイ)」について詳しく見る

事例2:奥州市「藤原の郷」

奥州市にある「藤原の郷」は、さまざまな歴史ドラマや映画のロケ地として利用されているテーマパークです。
同市では奥州市ロケ推進室を設置し、前面的にバックアップを行なっています。

電線の映り込みがなく、騎馬を自由に走らせられる大平原が、1993年の大河ドラマ「炎立つ」以降、歴代の大河ドラマの舞台となってきました。

テーマパーク内にはオープンセットが配置されており、映画「陰陽師」の大広間など、どこかで見た風景が広がります。

まさに「何もない」場所だからこそ、広大な敷地を使い、歴史ロマンあふれる空間を実現しています。

米所としても知られる奥州市のロケでは、近隣の農家が炊き出しを行い、ロケ隊におにぎりなどをふるまうのが恒例です。

農閑期のロケでは、地元の人たちが「マイ脚絆」「マイ手甲」を携えてエキストラとして参加をしています。

「えさし藤原の郷」について詳しく見る

③増やすのではなく活かす「人」

地方創生の方向性として外部から人を呼び込むのではなく、まず地元に根付く人たちの生きる喜びを増幅していくという考えを具現化し、成功している地域もあります。

内部の人が生き生きとすれば、それにひかれて外部の人が集まる場所へと育っていく可能性も広がります。

地域創生を他人事とせず、自分たちの手で成功させるためのヒントとなりそうです。

事例1:北海道網走市「東京農業大学 オホーツクものづくり・ビジネス地域創成塾」

豊かな農水産資源に恵まれながら、地域資源を十分に活かしきれていないという課題をもつ北海道網走市。

そこで始められたのが、“優れた加工技術とマーケティング能力を備え、地域の商品開発、起業・事業化できる人材を養成”するためのビジネス塾です。

対象となる参加者は、食品製造業、販売業、農業、漁業、建設業、自治体などで働く社会人で、オホーツク地域の地場産品を活用した商品開発や事業への起点となる人材を育成してことを目的としています。

地域のリーダー的人材として、「現代の榎本武揚」を養成することで長期的な地方創生へとつなげていきます。
今では100名を超える修了生によって、すでに商品化や事業化が実現しています。

「東京農業大学 オホーツクものづくり・ビジネス地域創成塾」について詳しく見る

事例2:山形県川西町吉島地区「NPO法人きらりよしじまネットワーク」

全世帯が加入するNPO法人を立ち上げたのは、山形県川西町です。
全員が地域の未来を考えるために、自発的であり、主体性をもった活動を目指しています。

若い世代を地域のリーダーとして育成する仕組みづくりや、地域の課題解決に向けての全員参加型の取り組み、子どもたちやお年寄りを守るための見守り活動など、持続性のある地域づくりを進めています。

発足までには3年の時間をかけ、丁寧な説明と討議が行われました。
NPOの運営は、住民からの寄付や会費で賄われるため、参加者意識が強化されます。

住民自身の手で地域の再生を行おうとする、強い意識が伝わります。

「きらりよしじまネットワーク」について詳しく見る

3つのポイントの総合的な事例

最後にITと地域特性、そして人というポイントを網羅している、徳島県上勝町の「葉っぱビジネス」をご紹介します。

すでに地方創生のモデルとして多くのメディアで取り上げられていますが、里山の葉っぱや花を収穫し、都会の料亭へ出荷・販売するビジネスモデルです。

上勝町は高齢者比率が52.39%という、過疎化と高齢化が進む小さな町に過ぎません。
しかしそこで生きる高齢者には、ビジネスに参加しているという気概があふれています。

パソコンやタブレットでその日の全国の市場情報を確認。
必要数に合わせて山へ出かけては、「収穫」に励みます。

「上勝情報ネットワーク」では各自の売上ランキングを見ることができるため、モチベーションも十分です。
年商は2億円を超え、個人年収が1000万円を超えるケースも見られます。

いつまでも現役で働き続けられること、地元の山の恵みが収益となることなど、地方創生の理想的な姿と言えるのではないでしょうか。

「葉っぱビジネスいろどり」について詳しく見る

まとめ 地方創生の成功への道を歩む

まとめ 地方創生の成功への道を歩む

成功事例を見ると感じられるのは、アイデア倒れに終わらせない現実的で客観性のある考え方です。

地方創生の成功には「より良い地域社会」といったスローガンではなく、「何をどうしたいのか」という目標設定が求められます。

漠然と「人口を増やしたい」ではなく、ではどうなればその状況が作れるのかといった具体的な提案を積み重ねることで道が見えてくるでしょう。

企業的な視点を持って評価基準を設定し、イメージではなく中長期にわたる予測や発展性を検討しなければなりません。

よそを真似した借り物の地方創生策ではなく、地域にある課題を見つめながら、人と地域特性を活かすための取り組みを考えていくことが大切です。

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