地方創生

農業に視点を置いた地方創生の取り組み事例

農業地帯

はじめに

農業に視点を置いた地方創生の取り組み事例

地方の創生を目指す上で、農業を無視することはできません。
農業は国民のもっとも根源的な必要品である、食物を作り出す重要な産業です。

しかし社会的な労働力の不足とともに、農業地域においては働き手の確保がますます困難となっているのが現状です。

日本全体の農地は年々減少傾向にありますが、その後に残るのは耕す人がいなくなり荒廃した跡地です。

農業の衰退は地域の衰退であり、やがては日本全土の衰退へとつながります。
多くの懸念材料を抱える農業ですが、一方で新たな動きも出始めています。

地域資源の活用に前向きな地域住民の取り組みや、農業経営への積極的な企業誘致、若者の田園回帰への志向など、明るい話題も少なくありません。

里山や田園などが原風景として再注目される中、農業の未来をどのように考えるべきなのでしょうか。

地方創生を考えるとき、地域の活性化と農業、都市と農業地域や各年代層の関係性がクローズアップされていきます。

農業と深く関わった地方創生の施策例を見ると、農業がさまざまな角度からとらえられ、他の産業との連携によって活性化されているのがわかります。

地方創生を目指す上では農業の重要性を再認識し、都市に住む消費者をも巻き込んだ取り組みがポイントとなりそうです。

地方創生における農業の重要性

地方創生における農業の重要性

①地方衰退に直結する農業人口の減少

地方からの人口流出と都市圏への一極化が日本全体の大きな課題となっていますが、農村地域における人口減少及び高齢化の進行は特に顕著です。

このまま進行していけば、やがては農地やコミュニティの維持が困難になる地域ばかりとなっていくでしょう。

農村がもつ機能は、単に米を始めとする農作物の供給というだけではありません。

美しい田園風景に代表される国土の保全景観の形成水源の管理、またその土地に伝わる文化の継承といった重要な機能を担っています。

農業地域の持つコミュニティ力は、都市生活では養われないものです。
農業地域の衰退は地方衰退に直結し、また日本人の心に宿る故郷の原風景をも喪失させます。

②農業地域の現状と将来の推測

農林水産省のデータによると、2010 年から 2050 年のうちに山間地域の人口は3分の1に減少し、約半数が 65 歳以上になると推計されます。

さらに平地の農村部でも人口が約4割減少し、全国の農村から人の姿が消えて行くという恐ろしい事態が現実に迫っています。

逆に人口9人以下の農業集落の農地は、2010年の5万haから 2050 年には 31 万 haと増大し、人の手が行き届かない農地の維持管理が困難になると見られています。

2008年をピークに減少に転じた日本の人口ですが、農業地帯では坂を転がるように減少傾向が加速し、それにともなって原野と化す田畑が増加していくと予測されます。

③農業の未来への希望は?

農業の危機が日を追って深刻化する一方で、かすかな未来への希望も見えています。

都市に住む若者を中心に「田園回帰」の動きが見られ、地方生活に興味を持つ人が増えてきているようです。

都市の過密状態やストレスフルな生活から、人間らしい暮らしを求めて、農業に目を向ける人も少なくありません。

農林水産省が主催する「田舎で働き隊」「地域おこし協力隊」に参加し、活動以降も農山漁村に定住する若者は数多く見られます。

また新規就農者のうち2割が 65 歳以上というデータもあり、リタイア後の人生のステージとして農業を選ぶ人が一定数いることが注目されています。

参考:農林水産省-新規就農者調査-

そうした動きを見て、シニア層を新たな農業地域のリソースとして期待する声もあります。

地域の活性化に向けては、若者、女性、高齢者の力を活かせるような取り組みを行うことで、新しい農業地域の在り方が生まれてくる可能性が広がります。

農業の地方創生への課題

農業の地方創生への課題

①新規参入へのハードル

農業の地方創生を妨げる要因の一つに、新規参入に対するハードルの高さがあります。

農業を志し、農業地域に参入しようとしても既存の組織の硬直化によって受け入れがスムーズにされないケースもあります。

実際に農業を行うための農地確保や水利権の取得も、大きな壁となります。

さらに技術ノウハウを辛抱強く指導してくれる人がいなければ、初心者農家が存続するのは困難です。

収穫までの生計を個人の責任のみで維持できるかという点についても、現実問題としてはかなり難しいものがあります。

②収入の安定と持続性

現代の国内の農家は地元にいながらにして、海外と渡り合わなければなりません。

TPPによる影響を受け、国際競争力の向上急務です。

価格の安い輸入農産物といかに戦っていくかを個別の農家に委ねるのは、あまりにも負担が大きすぎます。

付加価値を高めたり、安定して販売ができるチャネルを開拓したりといった、他分野からのアイデア提供などのサポートが求められるところです。

さらに昨今の異常気象による被害の増加も、農家を苦しめます。
台風や大雨の甚大な被害で、農業を止めざるを得なくなった例も珍しくありません。

自然災害は避けようがありませんが、収入源の多様化によってリスクを分散できれば離農の防止につなげられます。

③農業地域の魅力の向上

農業離れの一因として、農業地帯のイメージがあります。

農村は閉鎖的だ、面白みがないといったイメージが先行したままだと、そこで生まれ育った若者でさえつなぎ留めることはできません。

課題の解決に向けては農業の魅力発信を戦略的に行い、イメージを向上させることで捉え方を変えていくことができます。

ICTの活用により情報を広く公開していけば、現状を広く周知でき、また都市部との距離を縮められます。

ともすれば孤立を招きかねない農業地域ですが、積極的に情報発信を行うことで、都市部に暮らす人たちの興味を促していくことができるでしょう。

人手が足りないことを逆手に農業体験をイベント化した例としては、「金丸文化農園感謝祭」や「南アルプス市さくらんぼ収穫体験」などがあります。

情報発信や各種のイベントを通して都市生活者とのつながりを強化し、顔の見える生産者として農業の在り方に関心をもてるように仕向けていきます。

農業に関する地方創生の事例

農業に関する地方創生の事例

事例①北海道・士別市

北海道士別市では未来型農業都市の実現に向けて、ICT営農支援システムを活用した農業活性化に取り組んでいます。

スマートフォンからクラウドサービスを簡単にでき、作業計画の作成や配信、GPSによる作業エリアの確認などが手元の操作で可能になります。

基礎となっているのは、ICTツールの農業への活用アイデアと、自動車メーカーによる生産方式のノウハウを農業へ応用するという大胆な考え方です。

システム化を進めることで、新規参入者や企業型農業の育成、また既存の農家の経営強化につなげられます。

プロジェクトの推進力となっているのは、士別市の「稼ぐ力のある農業」への思いでした。

これを受け、北海道銀行が情報提供や事業提案といった協力を行い、官民連携でコミュニケーションを強化しながら、新しい農業の道を切り開いています。

士別市の取り組みについて詳しく知りたい方はこちら

事例②北海道・下川町

北海道下川町は全国にファンを持つほどの、ブランド卵の産地として知られていました。

しかし養鶏場の事業継承問題を抱え、ブランド卵は危機に瀕していたのです。
それを解消したのが、6次産業化という手法でした。

課題に取り組むにあたっては銀行がシンクタンク的役割を果たし、北海道を基盤とし、広く全国展開を行うレストランチェーンとのビジネスマッチングに成功。

新しい経営者を温かく迎え入れた地元住民のサポートもあり、ブランド卵は新しい体制の下、存続の危機を乗り越えられました。

下川町の取り組みについて詳しく知りたい方はこちら

事例③新潟県・阿賀町

福島県との県境に位置する阿賀町は、急峻な山岳地帯に囲まれた中山間地にあり、近年耕作放棄された土地が目立つようになっていました。

平地のように広く田畑を確保できず、白米の収穫量には限度があるというデメリットをもちます。

しかしそのデメリットをメリットに変えたのが、黒米でした。
黒米は白米よりもビタミンB1が約5倍、カルシウムが約2倍という優良食品です。

昨今の健康食品ブームの中で、次世代の注目食材として名を連ねており、高値での取引が期待されます。

しかし平地では白米と混ざってしまい、うまく栽培ができないという事情があり収穫量が限られていました。

阿賀町の中山間地という特殊性に目を付け、黒米栽培につなげたのは、Uターンし農業に新規参入した「外目線」によるものです。

阿賀町では耕作放棄地を借り受けるなどして今後は黒米の生産に注力し、地域資源に育て上げながら里山型農業の確立を目指しています。

阿賀町の取り組みについて詳しく知りたい方はこちら

事例④静岡県・富士宮市

富士宮市の酪農家は、生産する牛乳の品質に大きな自信をもっていました。

高品質で安全な牛乳を、未来を担う地元の子どもに届けたい、そうした思いから設立されたのが「富士宮ブランド牛乳」です。

富士宮市では大規模なプラントがなかったため、これまでは市外のメーカーに加工を委託しており、どうしても純度が落ちてしまっていました。

そこで「地産地消」「食育」を目指す行政と酪農家がタッグを組み、牛乳製造販売事業会社の設立を実現します。

その陰には行政と酪農家の熱意とともに、地元銀行による手厚いサポートがありました。

まさにオール富士宮と呼べる牛乳が学校給食用に提供され、地元への還元・サイクル化が生み出されています。

富士宮の牛乳を飲んで育った子どもたちが「富士宮ブランド」に誇りをもち、さらに全国へとその美味しさが広がっていく未来を目指します。

富士宮市の取り組みについて詳しく知りたい方はこちら

事例⑤岡山県・新見市

荒れ果てた有休農地から希少性を活かしたワイン造り、さらに地元食材とのコラボレーションへと広がりを見せているのが岡山県新見市の取り組みです。

もともとワイン造りに適した土壌であることを念頭に、無理をせずできる範囲から石灰岩質という土壌の希少性を活かし、ブランディングを成功させました。

さらにレストラン・カフェスペースで和牛やキャビアなど地元食材とのマリアージュが楽しめるという、6次産業化の手法も展開。

贅沢な時間を楽しめる場所として、都市部からの客を呼び込める農園となっています。

一度荒廃したブドウ畑を再起させられたのは地の利を良く研究し、継続可能なビジネスとして着眼したことで、地元銀行などのサポートを得られところが大きく寄与しています。

新見市の取り組みについて詳しく知りたい方はこちら

まとめ

つながり

農業による地方創生を考えるとき、農業分野単独での活性化はかなり難しくなってきています。

成功している事例を見ると「チーム〇〇」で地域が一体化することが重要であり、他業種・企業との連携こそが、農業に新しい力を与えます。

農産品の販売にしても、農家だけで複数チャネルを開拓するのは困難です。

自然環境による影響を少しでも和らげるためには、複数の収入元を得るためのアイデアも必要です。

地域全体が地域資源として農産品の見直しを行い、永続性の高いビジネスとして再生させようとする動きによって、地方創生につながる農業が実現していきます。

もっと伸ばそう!自治体ビジネス無料資料ダウンロード

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事