地方創生

地方創生の事例から見る金融機関への期待とその役割

銀行

はじめに

地方創生の事例から見る金融機関への期待とその役割

2015年に地域創生の総合戦略として打ち出された「まち・ひと・しごと創生」の中では、金融機関への協力要請が明記されています。

参考:みんなで育てる地域の力「地方創生」

高齢化が進み、労働人口が減少する中で、地域経済を盛り立てるのは容易ではありません。
地方創生を強力に推進していくためには、「産官学金労」が総力を結集することが必要です。

その中でも特に地域経済に精通し、中小企業とも関わりが深い金融機関の役割が重視されています。

内閣官房まち・ひと・しごと創生本部は金融機関に対して、以下のような協力を求めています。

  1. 地方版総合戦略の策定への協力
    金融機関が持つ幅広い情報や分析能力を用いて、地方創生に向けた計画策定への提案などを行ない、積極的に参加することが期待されています。
  2. 国の総合戦略や地方版総合戦略の実施に向けた協力
    産官学金労が連携して行う地方版総合戦略への取り組みに対し、金融機関が持つ知見を活かし、中心的役割を果たすことが期待されています。
  3. 地域における金融機能の高度化に向けた取り組み
    地域の企業の経営課題を良く理解している金融機関の立場を活用し、その解決への取り組みを先導する役割が期待されています。

地域資源を活用した事業化や、地域経済における生産性の向上、運営立て直しに向けた環境
整備など、地域創生に直結する課題は数多くあります。

地域経済活性化支援機構、政府系金融機関と密接に連携し、地域における金融機能の高度化を図ることにより、地域経済をバックアップしていきます。

地方創生において金融機関に向けられる期待

地方創生において金融機関に向けられる期待

①地域の「稼ぐ力」の底上げ

地方創生において、もっとも期待されているのは金融機関が長年培ってきた経験と知見による、経営改善のサポート力です。

多種多様な企業を見てきた金融機関ならではの、現実的で即効性の高い支援の技術が地域経済の底上げに役立ちます。

例えば経理分野など、「本業」を活かしたサポート力の発揮が地方創生の力となっていきます。
また複数機関の支援重複がないかを精査するといったことも、金融機関が得意とする分野です。

偏りのない支援を実施していくための、提言役となれるのも金融機関の側面のひとつです。

②インキュベーター的役割の強化

企業の育成は、地方創生の要となります。

既存の企業の強化や、新しい企業の誕生へのサポートは金融機関にしかできない役割です。

真に力のある企業を育てていくためには財務データのみの判断から、総合的な企業力を拠り所とする支援へと変えていく必要があります。

それを可能とするのが、企業が行う事業に対する深い理解です。

経営相談などを通じて多角的な情報を得ながら将来性に着眼し、大きな成長に向けた的確な助言を行えるプロとしてのサポート役を務めることが期待されています。

近年個人事業や小規模企業に対し、無担保融資が増加していることから、こうした流れが強まっていると言えるでしょう。

地方創生において金融機関が果たすべき役割

地方創生において金融機関が果たすべき役割

①「地方版総合戦略」策定への参加

各地域にはそれぞれの特性があります。

地方創生への歩みは一律ではなく、地域に適した戦略を組んでいかなければなりません。
地域に関する詳細な情報提供は、個々の企業の経営状態を知る金融機関だからこそ可能となります。

戦略策定に際して実現可能な施策であるのか、また時期的に適正なのかといった分析・提案を金融機関が担当することで、現実味のある計画の立案につながります。

②個別施策への協力

個別の施策についても、金融機関の目利き力が活かされます。
新規事業の発足やプロジェクト進行の精査など、金融機関の知見が貢献する場面が数多くあります。

各施策の地域の事情とのマッチングを図り、時には軌道修正への助言が必要とされることもあるでしょう。
金融機関から各プロジェクトへの、戦力となる人材の提供も期待されています。

③各ステージの金融機関との連携

地方創生という大きな目的を掲げ、厳しい道のりを進んでいく上で、段階ごとに連携する組織が変わる場合もあります。

地域活性化に関連する大きな組織としては、REVIC(地域経済活性化支援機構)や日本政策金融公庫などがあります。

金融機関は地元とこれらの機関との仲立ちを務め、スムーズな連携を目指します。

金融のプロとしてマクロ経済とミクロ経済のつなぎ役を果たし、地方経済の活性化への手段を探ります。

地方創生における金融機関の取り組み事例

地方創生における金融機関の取り組み事例

事例①京都信用金庫

京都信用金庫は、2018年度「地方創生に資する金融機関等の『特徴的な取組事例』」として表彰されました。

対象となったのは、情報マッチングシステムの「ビジネスマッチング掲示板」
この好評を受けて「くらしのマッチング」も開発しています。

目指したのは「ヒトとヒト」、「企業と企業」をつなぎ、地域のコミュニティを強化することです。

「ビジネスマッチング掲示板」では、「モノ・技術・サービス・情報」をつなぎ、「売りたい」、「買いたい」、「組みたい」、「知りたい」というビジネスニーズを組み合わせています。

具体的な成果として2018年には登録件数2,838件、引き合わせ件数1,499件、成約件数478件(引き合わせ率53%、成約率16.8%)という実績を上げています。

「ビジネスマッチング掲示板」に経営課題を投稿すると、即日のうちに多くの返信が見られると言います。
ビジネスネットワークの広がりに貢献し、経営者の悩みに寄り添う場を提供しています。

京都信用金庫の取り組みについて詳しく知りたい方はこちら

事例②津山信用金庫

地域の未来を見すえ、若い世代を育てる施策に取り組んでいるのが、岡山県の津山信用金庫です。

「中学生だっぴ」というキャリア教育プログラムを通じて若年層の生き方・考え方をサポートし、地域の未来を担う人材の育成を支援しています。

「中学生だっぴ」は、中学生が大学生や大人と車座になって、働き方や生き方などをテーマに対等な関係で話し合うプログラムです。

相手の意見を否定せずに受け入れながら議論を重ねることで、多様な価値観を学び社会への興味関心を高める狙いがあります。

またこのプログラムの中では女性の働きやすい社会づくりへの取り組みなどを紹介し、現代社会の中で未来へと生きる希望を見出せる機会がもたらされています。

中学生という多感な時代に大人と率直に意見を交わすことで、垣根を取り払い、本音を理解し合う場が提供されています。

津山信用金庫の取り組みについて詳しく知りたい方はこちら

事例③琉球銀行

沖縄県の琉球銀行では、地域経済活性化の施策として「キャッシュレス・アイランド」事業を推進しています。
この取り組みでは銀行本体でカード加盟店業務を実施するという、他に類のない施策を実施しています。

沖縄という特性上、銀行の手が行き届かない離島地域が数多く存在します。
そうした現状を改善するため、カード決済の利用促進・普及により生活の利便性向上を目指しています。

また沖縄は複数の有名ダイビングスポットや、自然に満ち溢れたマングローブ林など世界的な観光資源を有しており、近年海外からの観光客も増加しています。

キャッシュレス化の推進は、そうした地域資源を活かせるインフラ策となります。

「キャッシュレス・アイランド」事業の大きな特徴としては、大手カード会社を介入させていないことがあります。

国際ブランドから直接ライセンスを取得することにより、コストを安く抑えながら代理店を持てるというメリットがあり、経済的な負担を最小限に考えた施策が実現しています。

琉球銀行の取り組みについて詳しく知りたい方はこちら

事例④枚方信用金庫

大阪府の枚方信用金庫が実施しているのは、待機児童解消の課題への取り組みです。

これは「巡リズム」というユニークな取り組みの一環として、展開されています。

「巡リズム」では、高齢者が保有していた住居地への子育て世代の流入促進を目指します。

具体的には高齢者が住み続けられなくなった住居を空き家にしないよう、リノベーションを行い、子育て世代に賃貸したり多用途への転換を図ったりするものです。

枚方信用金庫は「巡リズム」施策に協力体制を敷いてきましたが、自らも研修施設を小規模保育所事業の用途として賃貸しています。

こうした活動は調布市と多摩信用金庫の連携事業などの際にも参考とされており、「巡リズム」のノウハウ提供などを通じて各地に拡大が見られます。

枚方信用金庫の取り組みについて詳しく知りたい方はこちら

事例⑤三井住友信託銀行

三井住友信託銀行では、森林信託受益権買取ファンドを活用した国内林業の再生事業に取り組んでいます。

「森林信託」のスキームを構築し、林業経営の合理化や森林の整備の促進に役立てています。

林野庁とも提携し、各地で大きな問題となっている所有者不明林や放置森林といった課題解決につなげられることが期待されています。

日本の国土の実に7割を占める森林の未来は、わが国の経済にも大きな影響を与えます。
林業の現状は、衰退に向かっており深刻さを増すばかりです。

「森林信託」の活用は森林資源の資産性向上を目指し、国産材市場の活性化、木造建築の推進を図る上で、重要な役割を担います。

三井住友信託銀行は大手ならではのダイナミックな地方創生策を展開し、国土の保全と林業復活に尽力しています。

三井住友信託銀行の取り組みについて詳しく知りたい方はこちら

まとめ

地方都市

政府が推進する「まち・ひと・しごと創生」は、衰退の様相が著しい地方に活力を与えるためには、まさに総力戦で当たらなければならないことが示されています。

その中にあって地元や企業についての情報とネットワークに精通し、経験と知見を有する金融機関ならではの地方創生への役割に期待がかかります。

金融機関に求められるのは、お金の流通だけではなくリサーチ力や経験値による貢献です。

地方創生に参画する金融機関には、地域の企業の活性化を「自分事」として関わる視点が重要です。

企業の事業運営を理解し、的確にサポートしていくことが地元経済に力強さを与えていきます。

実際の活動事例からは、金融機関の規模の大小を関わらず、それぞれの規模なりの参画の仕方があることが良くわかります。

地域の経済事情に通じた金融機関だからこそ、地方を盛り立ててゆくために、今何が大切なのかを見通せるのではないでしょうか。

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