地方創生

自治体のシステム化はデジタルファースト法案により加速する?概要や施策を紹介します

「自治体 システム」アイキャッチ写真

日本では2019年5月に、デジタルファースト法案(デジタル手続法)が可決されました。

デジタルファースト法案とは、「情報通信技術の活用によって、行政手続きの簡素化、効率化を図り、利便性を向上させること」を目的に、基本原則と行政手続きのオンライン化のために必要な事項を定めるものです。

そのような中で、日本では2016年1月から本格的にマイナンバー制度が導入されました。

マイナンバー制度とは、住民票を持つ全ての国民に1人につき1つのマイナンバー(個人番号)を付与する制度。
社会保障や税、災害対策などの分野で、国が効率的に個人情報を管理するシステムです。

マイナンバー制度を取り入れた目的は、大きく3つです。

  1. 国民の利便性の向上
  2. 行政の効率化
  3. 公平・公正な社会の現実

実際に2016年から、私たちの生活や、治体での申請手続きなどにおいて、どれだけの変化があったでしょうか。
それほど大きな変化を感じてらっしゃる方は少ないかと思います。

そこで今回は、デジタルファースト法案が行政のシステム化にどのような影響を与えているのか、詳しく考察します。

今回の記事は以下のデータを参考にしているため、気になる方はあわせて参考にしてみてください。

【出典】2019年3月内閣官房IT総合戦略室「デジタル手続法案について」

自治体のシステム化を加速させるデジタルファースト法案とは

「自治体 システム」写真1まず、デジタルファースト法案とはどのような内容なのでしょうか。
概要やメリット、懸念点を見ていきましょう。

デジタルファースト法案とは?

デジタルファースト法案(デジタル手続法)とは、正式名称を「情報通信技術の活用による行政手続等に係る関係者の利便性の向上並びに行政運営の簡素化及び効率化に図るための行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律等の一部を改正する法律案」といいます。

目的は「情報通信技術の活用によって、行政手続きの簡素化、効率化を図り、利便性を向上させること」。
行政のデジタル化に向けて、基本原則と行政手続きのオンライン化のために必要な事項を定めます。

「行政のデジタル化に関する基本原則」は、以下の3つです。

<1.デジタルファースト>
個々の手続き・サービスが一貫してデジタルで完結するもの

<2.ワンスオンリー>
1度提出した情報は2度の提出を不要とするもの

<3.コネクテッド・ワンストップ>
民間サービスを含め、複数の手続きやサービスをワンストップで実現するもの

上記の基本原則を通して、国、地方公共団体、民間事業者、国民などがあらゆる活動において、情報通信技術の利便性を受け取ることができる社会の実現を目指しています。

「行政手続の原則オンライン化のために必要な事項」とは、

  • 行政手続における情報通信技術の活用
  • デジタル化を実現するための情報システム整備計画
  • 民間手続における情報通信技術の活用の促進

などです。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

<行政手続における情報通信技術の活用>
行政手続きにおける通信技術の活用とは、オンライン実施を原則化するもの。
例えば、本人確認や手数料の納付もオンラインで実施することを目指します。

ただし当面、地方公共団体などは努力義務となります。

また、行政機関間の情報連携などによって入手・参照できる情報にかかわる添付書類は、添付を不要とする規定が整備されています。
添付書類とは、登記事項証明書や本人確認書類などが想定されています。

<デジタル化を実現するための情報システム整備計画>
デジタル化を実現するための情報システム整備計画とは、先ほど紹介したオンライン実施や添付書類の撤廃を実現するために、情報システムの整備計画や共用化を行うものです。

<民間手続における情報通信技術の活用の促進>
民間手続における情報通信技術の活用の促進とは、行政手続きに関連する民間手続きのワンストップ化や、法令に基づく民間手続きにおいて支障がないと認めた場合、オンライン化を可能とする法制上の措置を実施するものです。

自治体における行政手続きのオンライン化のメリット

では、行政手続きのオンライン化によってどのような変化やメリットがあるのでしょうか。

メリットは主に、「マイナンバーカードを手続きに活用できるようになったこと」です。

というのも、これまでは海外に転出する場合、条件によってはマイナンバーを返却する必要がありました。

しかし、オンライン化が実施されることにより、今後はマイナンバーカードを返却する必要はありません。
手続きにマイナンバーカードが利用できるようになり、本人確認や各種手続きも可能となります。

また各種手続きも、これまでは添付書類が必要でした。
行政機関間の情報連携により、添付書類が不要に。

さらには2021年3月より、マイナンバーカードを健康保険証として利用できるようになるといわれています。

上記のような変化を受けて、2020年5月25日以降、マイナンバー通知カードの新規発行や再交付が廃止されました。

【出典】マイナンバーカード総合サイト「個人番号通知書について」

今後さらに、各種手続きや民間サービスを含めた手続きにおける簡略化の推進が期待されています。

自治体業務のデジタル化における懸念点

ここまで自治体業務をデジタル化するメリットを解説しました。
その一方で、自治体業務のデジタル化には懸念点もあります。

懸念点は、「オンライン上での手続きに対応できない人も多いこと」です。
主に高齢者など、普段インターネットを使う機会の少ない人を指します。

日本の社会は高齢化が進んでいます。
高齢者はまだまだインターネットへの抵抗感があり、中にはパソコンやスマホを持っていないという人も少なくありません。

あらゆる世代の人が対応できるように整備することを考えると、自治体の手続きをオンライン1本化にするのはまだまだ多くの時間を必要としそうです。

自治体業務のデジタル化を推進するための個別施策とは

「自治体 システム」写真2デジタルファースト法案の成立により、関連する「住民基本台帳法」「公的個人認証法」「マイナンバー法」も改正されました。

それぞれの改正ポイントを押さえながら、個別施策について詳しく見ていきましょう。

施策1.国外転出者の本人確認情報の公証や電子証明書・個人番号カードの利用

マイナンバーカード・公的個人認証は、住民票を基礎とした制度です。
そのため、国外に転出して日本の住民票を削除してしまった場合、マイナンバーカードを利用できない現状がありました。

また、国外に滞在する日本人の増加、デジタル化の進展などの背景によって、官民のオンライン手続きが多様化。
国外転出者についても、「インターネット上で確実な本人確認ができるようにしてほしい」というニーズも高まっています。

上記のような背景の中、「住民基本台帳法」「公的個人認証法」「マイナンバー法」の改正により、国外においてもマイナポータルの利用が可能に。
年金の現況届などもオンライン上で手続きできるようになります。

将来的には「在外投票におけるインターネット投票を可能に」という構想も練られているようです。

施策2.本人確認情報の保存期間を現行5年間から150年間へ

住民票情報とは情報システムを活用する行政事務の基盤です。

マイナンバー制度の活用によって、年金など長期にわたり個人情報をシステム上で管理する事務作業を効率的に処理することが可能になりました。

また住民基本台帳法の一部も改正されています。
その背景は「日本の高齢化によって土地所有者の探索、休眠預金の活用時の同一人性の証明、土地所有問題への対応など、現在の居住関係の公証につながる過去の居住関係が公証されること」などへのニーズが高まっていること。

というのも市町村によっては、法令の保存期間を超えて保存し、条例に基づき「写し」の交付を行っている現状がありました。
このような現状に対応するために、住民基本台帳法の一部が改正されたのです。

内容は、保存期間を現行の5年間から150年間に延長するもの。
本人確認情報の長期かつ確実な保存のため、住民票などを削除した後も「除票」として保存する予定です。

期間の延長によって、空き家問題や財産問題など、特に地方自治体における課題に対応しようとしています。

施策3.オンライン本人確認手段の利便性の向上

デジタル化にともなう公的個人認証(電子証明書)の利用範囲拡大を見すえて、利用方法の多様化が必要とされています。

また、マイナンバーカード・公的個人認証の健康保険証としての活用が、2021年3月からスタートする予定です。

その中で、利用者証明用電子証明書について暗証番号の入力を必要としない利用方法を導入するなど、利便性の向上が図られるといわれています。

施策4.マイナンバーカード取得の促進

2020年5月25日に、マイナンバー通知カードの新規発行や再交付が廃止されたとお伝えしました。
そのぶん、マイナンバーカードの取得を促進する予定です。

マイナンバー制度が施行された際、全国民にマイナンバー通知カードが送付され、マイナンバー提出時などにおける証明書類として使われてきました。

ただ、転居時など記載事項変更の手続きにおいて、住民及び市町村職員の双方に負担がかかっているのが現状です。

またデジタル化推進の観点から、「公的個人認証が搭載されたマイナンバーカードへの移行を早期に促していくべき」との議論もあり、新規発行や再交付は廃止されたのです。

結果、「通知カード」と記載事項変更などの手続きは廃止。
自治体職員や利用者の負担軽減とマイナンバーカード普及を実現しようとしています。

行政のデジタル化の推進により進むシステム化

「自治体 システム」写真3今回は、地方自治体のシステム化に必要なデジタルファースト法案などを紹介しました。

これまで、自治体の運営や手続きなどはアナログからなかなか脱却できない状況が続いていました。
現在もFAXや書類が重視される背景には、行政のデジタル化の遅れも要因の1つと考えられます。

今回のテーマであるデジタルファースト法案は、長年課題とされてきた地方自治体をはじめとする行政の業務のシステム化を推進するものになるでしょう。

今後のポイントは、高齢者などデジタル化に不慣れな方にも配慮しながら、行政がシステム化を推し進めること。
その結果、自治体のコスト削減や職員の業務効率化につながり、より良い行政サービスの提供へとつながるのではないでしょうか。

自治体と仕事をしていきたいというシステム関連企業は、今後の自治体のデジタル化の動向に注視してみてください。
これからの自治体運営の在り方や関わり方について考えると、チャンスが生まれるはずです。
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