今さら聞けないプロモーションの基礎知識。意味、手法、ツール、流れ

「売り上げを伸ばすためにプロモーションをかけよう」
「新製品をPRするためのプロモーションを策定する」
このように最近やたらと耳にする機会が多い「プロモーション」という言葉。
マーケティングの世界にいれば当然知っていると思われがちですが、意外にも何となくでしか知らない人も多いものです。
そこで今回は、今さら聞けないプロモーションの基礎知識について網羅的に説明します。
自治体ビジネスでプロモーションを考えるときのポイントも合わせて紹介するので参考にしてみてくださいね。
目次
プロモーションの意味とは
プロモーションとは、特定の商品やサービスを売るために行う一連の活動を指します。
ここで注意すべきなのが、プロモーションは企業と顧客の間でなされるコミュニケーションの一部であるという点です。
コミュニケーションであることから、関わりは一方通行ではなく相互通行になりえます。
広義のプロモーションと狭義のプロモーション
プロモーションは企業と顧客のコミュニケーションであるため相互通行の関わりになると述べましたが、これは広義の意味でとった場合です。
実はプロモーションには広義の意味と狭義の意味があります。
広義の意味では、以下の4点を総称してプロモーションと呼びます。
◆広義の意味のプロモーション
・広告宣伝…広告やCMなど認知度を上げるための行動
・パブリックリレーションズ(PR)…顧客とよい関係を築くための行動
・セールスプロモーション(販売促進)…購入意欲をかきたてるための行動
・人的販売…人が関わって販売促進するもの
昨今では、SNSや口コミなどもプロモーション活動として強力なものとなってきており、無視できない存在となっています。
狭義の意味では、セールスプロモーション(販売促進)をプロモーションと呼びます。
ただマーケティングの世界では、広告とセールスプロモーションを混合して使うことが多いです。
プロモーションの手法とツール
主に狭義の意味のプロモーションでは、4つの手法と7つのツールがあります。
プロモーションの手法4つ
プロモーションの手法としては以下の4つが代表的です。
◆プロモーションの4手法
・試用手法…サンプルの提供、試食や試飲、モニタリング、デモンストレーション
・プレミアム手法…景品やおまけなど特典の提供
・プライス手法…値引き、クーポンなど価格面からの訴求
・制度手法…ポイントインセンティブ、サービス制度、会員組織
詳しくは以下の記事を参考にしてください。
参考:自治体プロモーションの種類は4つ!PRとの違いや地方創生に役立つヒントも
プロモーションのツール7つ
プロモーションに使用するツールとしては以下の7つが代表的なものです。
①グラフィック系印刷物
グラフィック系印刷物とは、チラシなど二次元上に表示される画像や文字などを利用して情報を伝えるものです。
対象となるものはポスター、チラシ、パンフレット、カタログ、ステッカー、包装紙、広告物、ロゴマークなど多岐にわたります。
ほとんどすべてのプロモーションで用いられるツールで、効果も高いことから重要性の高いツールです。
②編集系印刷物
編集系印刷物とは、カタログ、機関紙、会員限定の会報誌、マニュアルなど、グラフィック系印刷物よりも編集・作成の手間がかかる印刷物をさします。
通常の印刷物よりも手間暇とコストがかかり、直接売り上げに貢献するわけではないこともありますが、顧客のファン化とリピーターの作成には非常に有効なツールです。
③ネットツール
ネットツールとは、自社ECサイトや大手ショッピングサイトへの出店、SNSの運用、ネット広告、アプリなどネットを通じたあらゆるツールをさします。
現代では非常に重要性が高いジャンルで、欠かせないプロモーションツールとなっています。
多くの人が購入や消費の前にネットで検索する癖がついている現代では、店舗を持つ形のビジネスでも導入を検討すべきジャンルといえるでしょう。
④POP広告
店頭に置かれているちょっとした広告やディスプレイがPOP広告です。
購買時点メディアとも呼ばれ、店員のおすすめやポスター、ディスプレイ、スタンド広告などをさします。
最終的に購入を後押しさせるという点で重要なプロモーションです。
⑤イベント
イベントを開催し、話題化させることで購買意欲をかきたてるプロモーションがイベントです。
モノがあふれている現代では、何かを消費したり購入したりするときにストーリーを重視する傾向があります。
イベントはストーリー作りに非常に効果的で、顧客のファン化や深いコミュニケーションづくりに貢献できます。
ポップアップストア(話題作りのための一時的な出店)や展示会などもイベントに含まれます。
⑥動画系ツール
商品の紹介や企業の紹介などに動画を利用するプロモーションツールが動画系ツールです。
動画市場は年々増加傾向にあり、注目度の高いツールです。
視覚的情報と聴覚的情報の両方からアプローチでき、自然な形でストーリーを展開できるので非常に高い効果を期待できます。
⑦SPメディア
SPメディアとは、車内広告やネオンサイン、新聞折込など費用をかければ確実に露出できるマスメディアとネットツール以外のすべてのプロモーションツールをさします。
シニア層をターゲットとする場合や、地域を限定したビジネスなどと相性がよいのが特徴です。
出典:「プロモーション手法の計画と展開」日本プロモーショナル・マーケティング協会
ネット時代におけるプロモーションの7ステップ
現代はネット時代であり、ネット上にあらゆる情報と商品があふれかえっています。
情報があふれている現代では、不特定多数に向けたプッシュ型のプロモーションよりも興味をもつターゲットが自ら情報を取りに来るような、プル型のプロモーションの重要性が増してきています。
ターゲットに確実に情報を届け、購買意欲を促進するためには、適切なタイミングを見計らって適切なプロモーションを使って情報を届けねばなりません。
ネット時代におけるプロモーションは、以下の7ステップで行うことでより戦略的になり、顧客に届きやすくなります。
ステップ①ターゲットの明確化
まずすべきことがターゲットの明確化です。
これまでの一般的なプロモーションにおいてもターゲット設定は行われていましたが、現代ではより細かく、明確に絞り込む必要があります。
例えばコスメを売りたい場合、「20代の女性」というターゲット設定では不十分です。
「20代で敏感肌に悩んでおり、肌に優しいコスメを探しているが、そこまでコストはかけられない女性」というように、より具体的なターゲットをイメージする必要があります。
さらに設定したターゲットが自社の商品やサービスについての認知度、好感度、イメージについても把握すべきです。
ステップ②目的の決定
最終的な目的は当然購入・消費を促して企業に利益が入ることですが、そこに至るまでにはたくさんのステップがあります。
いきなり最終目的を達成するのは不可能なので、順番にステップをふんで顧客の購入意欲を徐々に高めなければなりません。
設定したターゲットの認知段階に合わせて目的を設定しましょう。
認知段階の確認方法には様々なモデルがありますが、1つのモデルとして「AIDMA(アイドマ)」モデルがあります。
これは消費者の購入までの段階を5つに分類したモデルで、それぞれの段階の頭文字をとったものです。
A | Attention(注目) | 商品・サービスを認識する |
I | Interest(興味) | 商品・サービスに興味を持つ |
D | Desire(欲求) | 商品・サービスを欲しいと思う |
M | Memory(記憶) | 商品・サービスを記憶にとどめる |
A | Action(行動) | 商品・サービスを購入するために行動する |
M(記憶)の部分を抜いて「AIDA」モデルということもあります。
いずれにせよ、目的を設定する際はターゲットがどの段階にいるかを考えるのが大切です。
ステップ③コミュニケーションの設計
ターゲットと目的を設定したらようやく「何を、誰が、どのように」メッセージを発信するかを設計します。
「何を」発信するかを考えるときは、ターゲットの背景を踏まえて目的にそった内容をメッセージに込めなければなりません。
伝えたいものではなく、ターゲットが受け取りたいものを設計する必要があります。
「誰が」については、基本的に企業自身が主体となりますが、広告などを活用するときは起用するタレントや芸能人が代理の主体となります。
SNS活用の場合はインフルエンサーなどもそうですね。
代理主体のイメージが商品・サービスのイメージにもつながるので、発信する主体の選び方には注意が必要です。
内容と発信主体をふまえ、「どのように」表現するかを決定します。
表現方法は大きく分けて「利益訴求型」と「イメージ型」に分けられます。
利益訴求型とは、ユーザーにとっての利益を情報として伝える方法のことです。
イメージ型とは、商品・サービスのイメージを膨らませる形で伝える方法です。
どちらがよいかは商品やサービスの特徴により異なるため、それぞれの特徴を分析したうえで決定しなければなりません。
ミックスして使うのももちろんアリです。
ステップ④コミュニケーションチャネルの選択
コミュニケーションの内容を設定したら最適なチャネルを考えます。
チャネルとは顧客とつながる窓口のことで、マスメディアやネットツール、口コミなどをさします。
大きく分けて人を介する人的なものと非人的なものにわけられます。
口コミや販売員からのおすすめなどが人的チャネル、広告やネットツール、屋外広告などが非人的チャネルに分類されます。
効果は人的チャネルの方が大きいですが、相互に関わりあって情報が伝達していくことが多いので、両方を上手に活用するのが最善でしょう。
ステップ⑤予算の設定
ここまで設定して初めて予算の設定に入ります。
どのような商品・サービスであれ、予算の裁量は企業の考え方次第です。
予算の決定方法には様々なものがありますが、おすすめなのは目標から逆算して予算を立てる方法です。
目標から逆算して予算を組み立てる手順は以下の通りです。
・市場の何%の人にメッセージを届けたいか設定します(市場シェア目標)。
・メッセージが到達すると思われる市場比率を設定します。
・メッセージを認知し、製品を試用する見込み客の比率(試用率)を設定します。
・試用率1%当たりの広告露出回数を見積もります。
・標的人口1%に対し、1回の露出にかかる費用(GRP)を算出します。
・GRPに基づいて予算を決定します。
ステップ⑥プロモーション比率の決定
プロモーションには以下の4つ(SNSを入れると5つ)の意味があると述べましたが、これらの方法をどのようなバランスで取り入れるかを決定します。
◆プロモーションの意味4つ(5つ)
・広告宣伝
・パブリックリレーションズ(PR)
・セールスプロモーション(販売促進)
・人的販売
・SNSなどの運用
これらのバランスを考えるときは、以下の2点を注意しなければなりません。
・商品、サービスのタイプ…例:消費財(BtoC商品)は広告向き、生産財(BtoB商品)は人的販売向き
・ターゲットの購入意欲段階…購入に近くなるほど人的販売の方が効果的になる
ステップ⑦効果の測定
プロモーションを行ったら、必ず効果を測定し結果についてモニターする必要があります。
効果の測定方法には様々なものがありますが、昨今ではKPIを使う方法がよくとられています。
KPIとは重要業績評価指標のことで、売り上げなどに次ぐ補助的な指標のことです。
認知度の増加や興味を持つ人の増加などをはかるために用いられます。
WEBページの閲覧数やSNSでのシェア数、WEBページへの来訪者に対してのクリック数や購入者数などをKPIとして用いることが多いです。
それ以外にも、アンケートを実施する、モニターユーザーを募集するなどの方法があります。
プロモーションは結果がわかりにくいことも多いだけに、どのように効果を測定するかまで考えておかねば次のプロモーションにつながらないので注意が必要です。
PR、広告、ブランディング、販売促進…プロモーションとの違いは?
プロモーションはPRや広告、ブランディング、販売促進などの言葉としばしば混同されます。
それぞれ、以下のような違いがあります。
プロモーションとPRの違い | 顧客へのアプローチが直接的なのがプロモーション 顧客へのアプローチが間接的なのがPR |
プロモーションと広告の違い | 広告はプロモーションの一種 |
プロモーションとブランディングの違い | 商品自体をアピールするのがプロモーション 企業全体をアピールするのがブランディング |
プロモーションと販売促進の違い | プロモーションを狭義の意味でとらえるとほぼ同義 プロモーションを広義の意味でとらえると販売促進はプロモーションの一種 |
自治体ビジネスでプロモーションを考えるときのポイント
過疎化が進み、地方創生が叫ばれる昨今では、「シティプロモーション」という活動が活発となっています。
シティプロモーションとは、地方自治体の良さをプロモーションし、交流人口や定住人口を増加させたり地域の好感度を高めたりしようという動きのことです。
プロモーションする対象が「シティ=地方自治体」ということですね。
シティプロモーションは自治体ビジネスの場としても参入の余地が大いにあるジャンルなのですが、全国的に取り組み数は急増しているがゆえに、方法のチョイスには注意が必要です。
シティプロモーションの目的は、多くが「交流人口の増加」「定住人口の増加」です。
ただ多くのシティプロモーションでは、「認知度を高める」「興味を持たせる」点で話題になることが多く、実際に目的を達成しているかを見落とす人が少なくありません。
他自治体の方法を参考にする場合は、目的を達成しているかも含めチェックする必要があります。
また、自治体とのビジネスはそもそもやり方が大きく異なるので、自治体ビジネスに関する知識をつけておくことも大切です。
プロモーションの役割は正しく理解して活用を
今回の記事では、プロモーションの基礎知識について網羅的に説明しました。
似た用語も多く、狭義の意味と広義の意味で意味合いが異なるため混乱するかもしれません。
実際活用している場面でその都度整理してみると徐々に理解が進むでしょう。
わからなくなったら何度でも本記事を参考にして整理してみてくださいね。