自治体から評価されるプロポーザルの戦い方【10のステップ】

自治体のプロポーザル案件で事業を獲得するためには、いかに自治体側に評価されるかが重要です。
各事業者が、「それぞれ自社には強みがあり、他社よりも優れている」と考えています。
しかし、自治体側に評価されない限り、選ばれることはありません。
プロポーザルはあらかじめ評価ポイントが決められているため、事前に知っておくだけでも選ばれる確率が高まります。
そこで今回は、自治体から評価されるプロポーザルの戦い方について解説します。
今回の記事を参考にしながら、プロポーザルでしっかりと自治体ビジネスに参入していきましょう。
目次
1.プロポーザルにおける主な評価ポイント
中津川市の事例をもとに、プロポーザルで求められる代表的な評価ポイントを見てみましょう。
実際は自治体や案件ごとに異なりますが、ひとつの資料として参考にしてみてください。
まず、区分が「書類審査」と「ヒアリング(プレゼンテーション)審査」に分かれます。
【書類審査】
「書類審査」では、事業者の実績、業務拠点、技術者の実績、経験、見積額について評価されます。
主に、参加表明書と見積書による採点評価となります。
【ヒアリング審査】
「ヒアリング審査」については、プレゼンテーションおよびヒアリングを通して評価されます。
書類審査の評価得点とヒアリング審査の評価得点の合計得点で、総合的に決定します。
本案件の配点を確認すると、以下のようにヒアリング審査を重視しているのがわかります。
- 書類審査:30点
- ヒアリング審査:100点
また「ヒアリング審査」の中の評価項目でも、“試作品の品質に対する評価”が配点の50%を占めています。
このように、「それぞれの項目や配点のバランスをしっかりと確認し、いかに配点比率の高い項目の評価を得られるか」がプロポーザルで勝つポイントとなります。
【前半】勝率を高めるプロポーザルの戦い方10のステップ
ここからは、自治体プロポーザルの勝率を高めるために必要な10のステップを紹介します。
まずは前半として、企画書など準備段階に必要な1〜5のステップをお伝えします。
ステップ1:まずはエントリーを検討
当たり前のことでもありますが、本当にエントリーするかどうか、しっかりと検討しましょう。
「この案件は参加資格あるから」と安易にエントリーしたものの、期限がギリギリ。
徹夜で頑張ったけど負けてしまった経験などありませんか?
エントリーするからには、勝算があるプロポーザルに応募する必要があります。
しっかりとエントリーの可否を見極めましょう。
1.エントリーの検討・可否決定は誰がする?
エントリーするかどうかの判断は、管理職が総合的に判断するべきです。
大切なのは、「勝てる可能性があるかどうか」。
例えば、
- 参加資格はあるのか
- 参入障壁の種別と程度はどうか
- 予算的に可能か
- 自社にとって受託する価値があるか
など、総合的に判断をしましょう。
2.参入障壁を確認しよう
参入障壁とは、他社が入り込みにくいようにするためのさまざまな要件のこと。
案件によっては他社に優位に働くような仕様になっているケースがあります。
参入障壁は、主に5つです。
【参加資格障壁】
自社、あるいは自社含め数社しか参加できない参加資格要件のこと
【業務内容障壁】
自社、あるいは自社含め数社しか実施できない技術的要素が業務内容に盛り込まれていること
【評価基準障壁】
プロポーザルにおいて、自社より他社が高い評価を獲得できる評価基準配点構成
【準備期間障壁】
プロポーザル・入札公告から企画提案書提出・応札までの期間を短期間に設定されている
【予算規模障壁】
他社が実施不可能な価格の予算設定である
これらを総合的に確認した上で、勝算があるかどうかを見極めましょう。
また、仕様書作成の段階から自治体と絡むことができれば、参入障壁を設けることで他社に勝ちやすくなるともいえます。
ステップ2:もっとも重要なコンセプトワークとは
続いては、もっとも重要といえるコンセプトワークの概要と、情報収集について解説します。
1.コンセプトワークとは
コンセプトワークとは、「自社であるべき理由」を洗い出すこと。
プロポーザルは自社だけではなく、競合他社も自治体の課題解決やニーズを満たす内容で提案します。
よって、自治体の課題解決やニーズを満たす提案をするのは当たり前であるといえます。
他社を制する提案には、仮説を立てながら「自社でなければならない理由」を予測することが欠かせません。
あらかじめワークを通して、自社であるべき理由を言語化してみてください。
2.コンセプトワークにおける情報収集
コンセプトワークをする上で重要なのは、情報を集めることです。
主に「自治体のニーズ」と「競合他社」の情報を把握し、勝つためのコア・コンセプト設定に役立てることが可能。
よって、以下2つの領域の情報を集めることが必要です。
- 自治体が実現したいこと(課題やニーズ)
- 競合他社の強み
情報収集の基本は、「仕様書・要領・様式などを読み込むこと」「リストアップした質問事項を所定の方法で質問すること」です。
あわせて、案件の根拠となる行政資料を公告文から拾い出して読み込んでおきましょう。
その中に、自治体側が重視している考え方やキーワードなどが見えてくることが少なくありません。
地域の具体的な課題や事業化された背景など、確認できることもあります。
また、競合他社の受託動向を把握することもポイントです。
参入障壁に基づき競合他社としてどこがエントリーするか予測したり、前年度に類似事業を実施している場合、受託業者は必ずエントリーすると考えて良いでしょう。
競合他社のホームページや自治体ホームページにおいて、近年の受注状況を確認することが可能です。
情報と自治体が重視している点を満たし、かつ競合他社にできないこと、あるいは競合他社を上回る要素について、仮説や予測に基づき、コア・コンセプトを作成します。
「なぜ競合他社ではなく、自社でなければならないのか」をしっかりと定めることを意識してみてください。
ステップ3:企画提案書の設計で押さえるべきポイント
続いては、企画提案書の作成におけるポイントを解説します。
1.前提として押さえるべきポイント
企画提案書の設計で前提として押さえるべきは「評価パターン」です。
プロポーザルの評価パターンは、主に以下の3つ。
【総合評価パターン】
企画提案書とプレゼンテーションの評価基準が同一で、総合的に判断するもの。
【個別評価パターン】
企画提案書とプレゼンテーションの評価基準が異なり、それぞれの点数を合計して判断するもの。
【段階評価パターン】
企画提案書とプレゼンテーションの評価基準が異なり、企業を段階的にしぼり込むもの。
後半に紹介した項目ほど、プレゼンテーション重視となります。
参加する案件がどのパターンなのか、仕様書などをしっかりと読み込みましょう。
2.勝率シミュレーションとは
評価される企画提案書作りのためには、評価基準を確認しなければいけません。
評価基準とは、企業から提出された企画提案書やプレゼンテーションを公平に評価するための「評価項目」や「評価点」「評価方法」などのこと。
この評価基準に「自治体ニーズ」が組み込まれています。
評価される企画提案書を設計するために、「勝率シミュレーション」に取り組みます。
そして「勝率シミュレーションシート」に結果をまとめ、その結果を反映させた企画提案書を作成します。
「勝率シミュレーション」とは、各評価項目に対して、勝率がどの程度か予測し仮説を立て、競合他社を制するための企画提案書の設計に役立てるもの。
作成においては、以下の結果をもとに作成すると効果的です。
- 既存事業者の参入障壁が設置されていないか
- 競合他社と点数はどこがどの程度差が付くのか
- どの項目で差をつける・縮めると勝率が上がるのか
3.企画提案書の構成
企画提案書の章立てを構成するとき、3つの考え方があります。
- 実施要領に指定された順番で構成
- 評価基準に沿って構成
- 仕様書に沿って構成
評価基準への回答および評価基準への検証結果が漏れ抜けなく入っているか、確認しながら組み立てましょう。
企画提案書全体のデザインを俯瞰できるようなワークシートにまとめるのがおすすめです。
ステップ4:企画提案書の作り込みで重要な「ワーディング」とは
次は企画提案書を作り込むときの「ワーディング」について解説します。
1.重要なのは「ワーディング」
「ワーディング」とは、伝えたいことを文章で表現する技術です。
自治体は文章でコミュニケーションをとる文化があり、文書で理解する傾向が強いです。
自治体の敬称や、ネガティブな表現をポジティブな表現にすること、差別用語と取られる表現はもとより、男女共同参画上不適切な表現は避けなければいけません。
2.企画提案書の作り込みで代表的なポイント
企画提案書を作り込むときの、代表的なポイントを押さえましょう。
- 評価基準への回答を漏れ抜けなく言い切っているか
- 自社でなければならない理由を訴求できているか
- 業務実績に「技術的特徴」を明記できるか
- 業務実施体制は自治体目線で書かれているか
- 「エグゼクティブサマリー」を書いているか
「技術的特徴」とは、提供できる価値のこと。
過去の実績により、その自治体にどのようなバリューを与えたのか、などです。
「エグゼクティブサマリー」とは、提案全体のポイントをまとめた提案概要や提案要旨のこと。
企画提案書の冒頭には、「エグゼクティブサマリー」を必ず盛り込みましょう。
最低限、上のポイントを押さえた企画提案書を作成することで、自治体から評価されやすくなります。
ステップ5:あなどれない企画提案書の提出準備とチェック
プロポーザルを1人で担当していると、押印漏れ受け付けてもらえない、書類は持参して提出するところに郵送してしまうなど、少しのミスによりそれまでの苦労も水の泡になるリスクがあります。
書類や手順などは、必ず2人以上でダブルチェックをしておきましょう。
提出前は、部数や押印の有無、印刷の向きや文字の大きさなど、体裁を必ず確認してください。
また、提出ルールが決められている場合もあります。
提出期限、消印有効なのか、郵送・メール・持参など提出方法、提出後に連絡が必要なのかなど、細かいルールを確認しておきましょう。
おすすめはチェックリストを作っておくこと。
全員で共通の確認項目を用意しておくと、確認漏れを防ぐことも可能です。
【後半】勝率を高めるプロポーザルの戦い方10のステップ
続いては、後半の6〜10までのステップを見ていきましょう。
ステップ6:確認必須!プレゼンテーションの要件8つ
プレゼンテーションに臨むに当たり、事前に確認しておくべき要件があります。
以下8つのプレゼン要件は、必ず確認することをおすすめします。
- 時間に関する要件
- プレゼンの順番
- プレゼン参加人数
- インフラ関係(会場・配置・機材等)
- 使用可能な補助ツール
- 評価メンバー
- 評価基準および配点
- 禁止事項
ステップ7:プレゼンテーションプランの構築
続いては、プレゼンテーションプランを構築していきましょう。
1. プレゼンテーションプラン構築5ステップ
プレゼンテーションのプランを構築する5ステップは、以下の通りです。
①評価プロセス及び評価基準の確認
評価基準の違いによって、訴求するポイントやプレゼン構成が異なります。
他社を制するための戦略を確立するために、しっかりと確認することが必要です。
②訴求ポイントの抽出
限られた時間の中で、企画提案書の内容をすべて説明することは不可能です。
どの部分を重点的にアピールすべきか、しぼり込みましょう。
③プレゼンメンバーの編成
それぞれの訴求ポイントを提案するのにふさわしい人員を編成すると、説得力が増しやすいです。
④補助ツールの手配
訴求ポイントを、より効果的に提案するために用いる資料やツールなどです。
主にフリップやサンプル、デモンストレーションなどがあります。
⑤シナリオ構成とモックアップ
自社の優位性を分かりやすく伝え、説得力のあるあらすじを作りましょう。
2.プレゼンテーションプランシートの作成
プレゼンの項目ごとに各パートの秒数や担当者、プレゼン内容などを整理したシートを作成します。
各パートに他社攻略のポイントなども記載しておくと、プレゼンの訴求力が増す上に、抜け漏れがない準備を実現できます。
ステップ8:勝敗を左右する質疑応答の対策
評価員は、その評目に何点をつけるか、質疑応答の対応の結果で判断することも多いです。
企画提案書が競合と僅差の場合、質疑応答の対応が勝敗を分けることも少なくありません。
想定質問シートなどを作成しておくと効果的です。
また、ひとまず質問を受ける担当者を決めておき、質問の内容に応じて適切なメンバーに振る体制をとるのもおすすめ。
チームとしての連携の良さをアピールできる上に、一旦質問を受けることで、回答する担当者は回答内容を整理することが可能です。
気持ちの余裕を確保できるため、結果としてより良い回答ができるでしょう。
ステップ9:重要なリハーサルをしっかりする
プレゼンテーションプランで意図したことが評価員に伝わるかは、実際にやってみないとわかりません。
またリハーサルで新たな問題点に気づくこともあります。
限られた時間内でプレゼンを終わらせるためにも、リハーサルでチームプレーを高めておきましょう。
ステップ10:次につなげる勝因・敗因分析
自治体プロポーザルには買っても負けても必ず理由があります。
その理由を把握することが、次回以降の勝率アップにつながります。
まずは、競合他社の勝因を探るために、企画提案書を手に入れましょう。
勝率シミュレーションの結果と突き合わせて、どこにギャップがあったのかを明確にし、次回の改善につなげてみてください。
まとめ:プロポーザルは自治体の課題解決を目標に
今回は、プロポーザルで評価され10のポイントを紹介しました。
ここまでをまとめると、紹介したのは以下の10個です。
- エントリーの検討
- もっとも重要なコンセプトワークとは
- 企画提案書の設計で押さえるべきポイント
- 企画提案書の作り込みで重要な「ワーディング」
- あなどれない企画提案書の提出準備とチェック
- プレゼンテーションの要件8つの確認
- プレゼンテーションプランの構築
- 勝敗を左右する質疑応答の対策
- 重要なリハーサルをしっかりする
- 次に繋がる勝因・敗因分析
プロポーザルで勝つためには、ただ自社のアピールをするだけでは足りません。
競合他社と比較して、「より自治体の課題解決をできる」と評価される必要があります。
しっかりとした準備によって、自治体に評価されるプロポーザルを目指しましょう。