国が進めるICT戦略。システム関連のプロポーザルを攻略するポイントとは?

日本の行政のICT化は、世界の中でも遅れているといわれていることをご存知でしょうか。
国としても今後推し進めていこうとしている分野。
国や地方自治体においても行政のICT化が今後ますます活発になると思われ、システム関連の事業に取り組む事業者にとっては、追い風といえるでしょう。
今回は、国が進めるICT戦略に関する関連施策を押さえたうえで、事例をもとにシステム関連プロポーザルにおける攻略のポイントについて解説します。
今回の記事を参考にしながら、システム関連のプロポーザル案件にチャレンジしてみてください。
目次
システム関連プロポーザルに取り組むときに知っておくべき関連施策とは
まずは、国が推進するICT戦略に係る関連施策について解説します。
データは以下を参照しているため、あわせて参考にしてみてください。
【出典】総務省「行政のICT化-世界最先端のICT国家の実現-」
総務省が推進する行政のICT化とは
平成26年の総務省第9回経済財政詰問会議で、行政のICT化について提言されています。
世界で最先端のICT国家になることをミッションに、ビジョンとして以下の3つを用意。
1.強靭な共通システム基盤を作る
2.公務員の働き方を変える
3.行政サービスの利用者負担を下げる
1.「強靭な共通システム基盤を作る」とは、情報インフラの合理化や再構築を通して、国や地方の運用コストを3割相当の圧縮を目指すものです。
政府情報システムの統廃合・クラウド化や、大規模システムのコスト削減、通信ネットワークの再編成などが含まれています。
2.「公務員の働き方を変える」とは、働き方の見直しや業務改革の徹底をするもの。
例えば、オフィスのペーパレス化職員のPC・スマホから職場にアクセスできるようにするなど、ワークスタイルの改革が当てはまります。
その他にも電子決裁の徹底、競争入札の原則オンライン化など、共通システムの活用を通して取り組みます。
3.「行政サービスの利用者負担を下げる」で目指すのは、ICT活用による行政サービスの向上など。
行政手続きにオンライン利用促進や統計調査のオンライン化推進、公的個人認証サービスの活用促進などが当てはまります。
社会全体のデジタル化の推進を目指す「ICTグローバル戦略」
参総務省では、社会全体のデジタル化の推進によって、平成30年12月から「デジタル変革時代のICTグローバル戦略懇談会」を開催しています。
そして、それらを踏まえ令和元年に「ICTグローバル戦略」が公表されました。
目的は「SDGs(Sustainable Development Goals)といわれる国連の持続可能な開発目標の達成」「Society 5.0の実現に貢献すること」。
SDGsの達成や実現に向けた方策を検討するために取り組まれています。
本戦略では、以下を基本理念としています。
- 社会全体のデジタル化を推進し、SDGs達成に貢献すること
- Society 5.0の理念を世界に広げ、これをグローバルに実現すること
- 産業構造や労働環境を効率化し、多様なライフスタイルの実現や新たな価値を創造できる豊かな社会を実現すること
加えて、次の6つの戦略も推進。
1つずつ見ていきましょう。
1.デジタル化によるSDGs達成戦略
地球上の誰1人として取り残さない社会の実現に向け、官民の各セクターが相互に連携。
社会全体の徹底的なデジタル化を進め、日本と世界の社会課題の解決を推進するもの。
2.データ流通戦略
データの自由な流通の重要性を海外に向けて発信するとともに、個人によるデータコントローラビリティの確保に向けた取組と、「情報銀行」における社会実装の推進。
3.AI/IoT利活用戦略
AIを人々のより良い生活につなげていくという「AI時代の未来像」を国内外に発信。
4.サイバーセキュリティ戦略
各国とIoT機器・サービスの急速な普及などによる社会変化に対応したセキュリティに関する共通認識を醸成。
5.ICT海外展開戦略
日本が培った信頼性の活用、ルール形成への関与やキャパシティビルディングへの支援などによる海外展開を推進。
6.オープンイノベーション戦略
2030年代の具体的な将来像の実現に向けたキーテクノロジーの高度化を推進。
このように、国としてもICT活用を推進していきたいと考えているぶん、各自治体においてもシステム関連のプロポーザルが増えることが予想されます。
まずは、ICT関連の関連施策を確認し、要点を押さえた上で案件に臨むことをおすすめします。
【出典】総務省「ICTグローバル戦略の公表」
事例で見るシステム関連プロポーザル案件の種類
続いては、実際にどのような案件が出ているのか、事例をもとに見ていきましょう。
1.新庁舎情報システム構築業務公募型プロポーザル【栃木県真岡市】
真岡市にて庁内情報システムを構築するために募集されたプロポーザル案件です。
目的は「新庁舎における、高度な職務遂行機能と利用者の利便性を高めこと」。
新庁舎情報システムは、職員間の連携・情報共有を密にできること、またシステムの運用管理にかかる負担を可能な限り軽減する環境を整備するものです。
あわせて、来庁者も利用できる公衆無線LANによってインターネット接続サービスを提供し、市民が幅広く活用できる新庁舎を目指します。
評価のポイントは、求められるシステム要件をいかに満たしているかとなります。
2.情報システム最適化支援業務委託【千葉県市川市】
市川市では、住民登録や税、福祉などにおける業務の効率性と正確性を目指して、かつてより業務のデジタル化を進めていました。
一方、長年にわたり情報システムを運用していく中で、情報システムの維持・運用費用が増大している事実も。
度重なる制度改正や市民からのニーズの多様化などに対応すべく、新たな情報システムの導入や既存システムの改修を繰り返してきたためです。
このプロポーザルの目的は、「より効率的かつ合理的な情報システムの維持運用を図ること」。
市川市が保有する情報システムの費用構造分析や調達に関する課題を整理し、改善方策について提言するものおよび、今後の情報システム再構築や整備方針を策定します。
特に、高く配点が高く設定されているのは、以下の2点です。
- 個別システムを含む全システムの最適化などに向けた評価・分析
- 内外の動向を踏まえた市川市基幹系システムの整備方針検討
3.児童家庭相談システム構築業務【熊本県菊陽町】
菊陽町では、児童家庭相談に関するシステム構築業務をプロポーザルとして募集しています。
これまで菊陽町の家庭児童相談業務では、管理記録及び各種会議資料などはエクセルや紙媒体で管理していました。
ここ最近の児童虐待相談に対応する中で、今後増加するであろう複雑な相談への対応をより一層強化するため、新たな管理システムを導入します。
各種業務における作業効率の向上および個々の事例における支援強化を目的として、事業効果を最大限に発現。
システムの要件などを比較し、導入するに最適なシステムを選定します。
基本要件は、例えば以下です。
- 職員が利用しやすい画面設計及びWebシステムである
- ユーザーをIDおよびパスワードにより管理し、システムを使用できるユーザーを制限できる
「機能要件適合調査表」にある内容を満たしている機能面や、見やすい画面、入力・検索機能の簡易性など操作性の配点が高くなっています。
【出典】きくよう町子育て情報サイト「【公募型プロポーザル】菊陽町児童家庭相談システム構築業務」
ここまで紹介したように、システム関連のプロポーザルも多様です。
配点の高い項目の評価を得るためには、尖った特徴を持つよりも、いかに安定してかつ幅広い対応ができるかどうかをポイントに考えましょう。
事例から学ぶシステムプロポーザルの攻略のポイント
ではここからは、具体的な函館市の事例をもとに、システム関連プロポーザルの攻略のポイントを見ていきましょう。
事例は以下からピックアップしています。
気になる方は、あわせて参考にしてみてください。
ポイント①プロポーザル仕様書・説明書を読み込もう
どのようなプロポーザルでも、まずは仕様書を読み込むことから始めましょう。
函館市の案件は、函館市企業局の委託する水道料金等オンラインシステムの導入および運用業務に関するプロポーザルです。
仕様書の第1章では、本業務の一般事項について、業務の範囲や履行期間、システムの稼働場所などが記載されています。
詳しく見ると業務の範囲はもちろん、導入準備期間や履行期間が長いです。
令和4年~令和11年の7年間と長期に渡ることなども確認した上で、プロポーザルに参加するかどうか決定しましょう。
規模が大きいぶん、業務を受託することができた場合には大型案件となるはずです。
ポイント②選考方法および評価項目の確認は必須!
募集要領に、選考方法が記載されています。
業務提案書、機能要件書および業務提案見積書のほか、以下をもとに評価と採点し、平均点数が最も高い事業者が選ばれる仕組みとなっています。
- プレゼンテーション
- デモンストレーションおよびヒアリングの内容
業務提案書などに関しては、しっかりと作成要領をチェックすることがポイント。
「6.業務提案書等の作成および提出に関する事項」に、作成形態や提出部数などが記載されています。
必ず指定条件に沿った内容や提出部数になっているか、確認しておきましょう。
特に、業務提案書の記載内容については、「7.業務提案書の記載内容に関する事項」に記載されている項目や順序で作成することが欠かせません。
作成後もしっかりと必要な事項を網羅しているか、ダブルチェックやトリプルチェックをすることをおすすめします。
また選定基準における、項目ごとの配点についても定められています。
システム関連のプロポーザルの特徴は、デモンストレーションによる評価があること。
提案するシステムの操作方法が理解できるようにシステムを用いて説明する必要があり、配点も高い傾向です。
提案システムと同一もしくは同等の製品を準備する必要があるため、準備時間をしっかり確保しましょう。
ポイント③自社ならではの強みで勝負する
そしてプロポーザルで他社に勝つためには、自社を選ぶ理由や、他社にない強みで勝負することも重要です。
その一方で、システム関連のプロポーザルに関しては、以下3つを求められる傾向があります。
- 要求する要件を満たしているか
- 安定したシステム運用が可能か
- 保守内容
他社と比べて、尖った特徴をアピールするだけでは足りません。
要件に従って、確実・着実にシステム開発や運用が可能であるかを重視することが、勝てるプロポーザルになるポイントといえます。
まとめ:システム関連のプロポーザルは要点をおさえて挑もう
今後も増えてくると予想されるシステム関連のプロポーザル。
数が多いぶん、競合も多いかと思われます。
自治体はリスクを嫌う傾向があります。
これまで自治体での導入事例がない企業の場合、はじめは少しハードルが上がる可能性は高いです。
ただし1度でも自治体ビジネスに参入することができれば、自治体の横展開へつながりやすくなります。
今回取り上げた事例のように、大型案件から比較的規模の小さいものまで幅広いです。
しっかりとした準備をした上で、気になる自治体で募集しているシステム関連のプロポーザル案件にチャレンジしてみてください。